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ぼんちゃ! ジェノドです。
先日開催させて頂きました、『Sin&Punishment 〜あなたは私を許してくれますか?〜』で披露させていただいたお話…。
少し遅くなりましたが、先日のドレアショーで俺が披露した『見守り続けた男』を短編ぽく書いてみましたよ♪
猫は貴族の夢を見て以来の創作😳
ご興味ある方、今暇やなって方良ければ読んでくださいな🙌
ちなみにスタジオは『#とぅにスタ』さんをお借りしました♪
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見守り続けた男
奴隷だった女の腹から生まれ、幼い頃から一人ぼっちだった。少年はゴミ溜めで生活し、誰の手を借りるでもなく、死に際を生き続けていた。
そんな少年に手を差し伸べたのが同じくらいの歳の少女だった。彼女は貧困ながらに、両親と懸命に生きていた。苦しむ人を見て見ぬふりなど出来ないと少女は言った。
馬鹿だと思った。ただでさえ金もないのに、なぜ人を救うのか。奴隷として犯される母を見て、逃げ出して、ただ生きるだけの置物のような子供をなぜ助ける。
少女が差し伸べた手を、少年が振り払う。しかし少女は、払われた手をもう一度伸ばした。少年がその手を取るまで伸ばし続けた。
2人が、少年少女から青年になった頃。互いに笑顔の絶えない日々を送っていた。いつでも2人は笑い合い、次第に惹かれ合い。共に朝を迎えることだってあった。
幸せとはこの事だとそう思えた。
ある日、男の元へ手紙が届いた。綺麗とは言えない文字で書かれた、とある場所への案内状。そして、そこで働けと言う文字と目が飛び出るほどの高額な報酬。
隣で静かに寝息を立てる女の頬をひと撫ですると、まだ太陽も登りきっていない朝、服を整えた男は女の元を去った。
吐き気、吐き気、吐き気。痣だらけの男が犬として買われ、若い女が子を産むための道具として買われていく。ひたすらに気持ちが悪かった。全ては金のため。金があればきっと今よりいい生活ができる。そう信じて、男は働き続けた。
暴れる男を取り押さえ、頬に大きな傷を負っても。気が狂ってしまった女に片目を潰されても。息を飲み、涙を枯らし、感情を殺し続けた。
感情を殺し続けすぎた。
痣だらけの男が犬として買われても、若い女が子を産むための道具として買われても、何も感じなくなっていた。
自分はなんのために働いているのかもいまいちわからない。わかろうとする気力も失っていた。
だから、あれだけ愛した女がこの会場に運ばれ、男を見て泣いていたことに何も感じなかった。
やっと会えた、どこに行ってたの。
ねえ、ここから逃げよう。ダメだよ、こんなところは。
お金なら大丈夫、2人で何とかできる。
右の耳から入ってきた言葉は、左の耳に抜けていく。1200万の値がついた女は、連れ去られるその時も泣いていた。男を見て、泣き叫んでいた。
助けて…。
朝、オーナーに声をかけられた。このオーナーが自分の父親だと言うことに、男は気づいていない。いや、気がついているのかもしれないが、だからどうしようとも思わない。
よくこの会場で買い物をする貴族の方が、お前を買いたいと言っているんだ。良かったな。
界隈で有名人なその貴族は、商品の中に若い男がいると、桁違いの値を付け、買い取る。その後の事は知らないが、散々食い散らかした後、飽きたら捨てるとか何とか。
男は首を縦にも横にも降らない。どうでもよかった。
自分が買われる日の朝、ふと思い出した。
小さな手を懸命に差し伸べる少女の姿を。太陽の下、キラキラ輝く笑顔をこちらに向ける女の姿を。暗がりの中頬を赤らめて、恥ずかしげにこちらを見る女の姿を。
泣きながらこちらに助けを求める女の姿を。
愛した女の涙を、なぜぬぐえなかった。わからない。なぜわからない。なぜ?
涙も出せない。出てこない。なぜ?
こんなにも、悔しくて、怒っているのに。悔しい、怒る。それは何?
オーナーに背を押されて、ハッとした。
早く行け。
はい、行ってきます。
感情も涙も愛も、自分も。全てを失った。
これが人が売られていく姿を見守り続けた男の罪と罰…。